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笑いにチャンピオンは必要か?

紳助がブタ箱行きになるのに前後してM1が終了して、M1という番組が大嫌いだった自分は実にせいせいしていたのだが、先日フジテレビの野郎が何の工夫も無くM1をパクってTHE MANZAIなるものを始めたようだ。
プライドというものがねえのかこいつらと憤慨しながら、色々思う所があったので、書き連ねてみる。




そもそも自分がM1を激しく嫌う理由は、笑いというものに唯一無二のチャンピオンなんか要らねえだろという自分の持論による。

某犯罪者がムショ帰りに作詞したのを某アイドルグループが歌ってセンバツの入場曲にもなった某名曲の歌詞に「ナンバーワンにならなくてもいい もともと特別なオンリーワン」というのがある。
これが入場曲に使われた高校野球等、使う局面によっては欺瞞以外の何物でもない言葉だが、とある局面ではまことに真実だ。そのうちの一つが、視聴者視点でのお笑いの世界である。

笑いと一言で言っても、勢いで笑わせるタイプもあれば、少し距離を置いた所で冷静に突っ込むタイプもあるし、シュールな笑いだってある。そういう単純な分類ではくくれないタイプの笑いも非常に多い。
お笑い番組について、いっぱい笑わせてくれるのならそれで満足である自分にとっては、決勝戦に勝ち残った連中の演目が全部終わった所で番組終了してくれても一向に構わないのだ。その後の格付けなんか、蛇足も良いとこである。
この手の大会において、最近はお笑いの形にすらなっていない連中も多く参加するため、そういう連中をふるい落とすための足切りとしての第一次選考的なものは確かに必要だとは思う。逆に言うと、笑いとして形を成してさえすればそれだけで十分だ。
そういう意味で、個人的には、実際に存在した例の中で選ぶと、爆笑オンエアバトルのような形式が一番理想的である。一応点数が多い者から順にオンエアする辺りに漫才コンテストの名残があるわけだが、上位何人かに入っていればオンエアされる。そいつらが全員面白ければこっちは充分満足なのだ。

参加者から「日本一」を選ぶことの欠点としては、上で述べたように、視聴者目線からみると完全に蛇足であることが一つ。
その他の理由としては、「日本一」を「勝ち取る」以上、勝つために有利な漫才というのが存在するわけで、そういうのばかりが優遇されて画一化してしまいがちであること、順位が確定するものである以上、一位以下の芸人に対してどうしても要らぬマイナスイメージが付いてしまうことが挙げられる。

例えば、自分は決勝戦に残った者たちの中で、ナイツの漫才は純粋にかなり好きである(宗教その他の面については置いといて)。ただし、ナイツの面々が一位を取る漫才に向いているとはとても思えないのも事実で、彼らの笑いはむしろ一位を取って主流になった途端に価値が暴落してしまう類のものだとすら思っている。永遠のダークホースの位置にいて一番輝く笑いだ。そういえば、笑い飯もそういう類の芸人だったと思う。

これが足切りをスルーして決勝に残った者たち全員を讃えて終わる形式の番組だったら、いぶし銀のナイツはその価値を純然と保ったまま気持ちよく番組を終われるわけだが、一位の者を決めてしまうと、一位を取れない彼らは必然的に「一位になれない芸人」というありがたくない称号をいただくわけで、いわゆる一つの貧乏くじである。このマイナスイメージは、彼らの味を示す勲章であるといえばまぁその通りだが、無ければ無いで不便でもないし、まったくもって不必要だ。
前述のように、笑いといってもいろんなものがある。そういう多種多様な生態系にも似た笑いの枠組みを、日本一決定戦という形ですべてくくれるかというと全然そうは思わないし、勝ち負けを競う形式の中で暴落してしまうものすらあるのだ。

それに、芸人の中で「一番」を決めたとして、視聴者側には何の得も無いのである。プロデューサーとしても、「一番」を取った芸人がテレビ映えするスキルを持つ素材、いわゆる「当たり」であるかというと、決してそうとは限らないのはM1優勝者達を見ても明らかであり、芸人日本一という称号を過信してはいけないというのをいい加減学んでいるはずである(よね?)
というか、芸人の中で「一番」を決めたところで、得をするのはどう考えても芸人だけだろうきっと。何度も言うように、笑いといっても多種多様だが、それは言いかえると「一番」の指標が無いということでもある。「ナンバーワンなんて無い。みんな特別なオンリーワン」では、自分の芸に価値があるのか分からない

余談だが、個人的に、これはオタクのコミュニティにも同じ現象が起きていると自分は考えている。
そもそもオタクという人種は、一人一人が「自分は他の者とは違う」という意識によって成り立っている(というより、そういう自意識を持てと大塚英志その他に言われてそうなったといった方が正しいが)。彼らが我が道を突きつめるための原動力はいつの時代もそのような、今風に言うなら中二病的な自意識である。その状況下だと、正しさを証明、判断するのは、究極的には自分自身だけである。
ただし、そういう80年代辺りのオタクの形もネットの普及をきっかけとして決定的に崩れている。自分にオタクという称号を付けて、それでオタクが好みそうなコンテンツを嗜むことでオタクを名乗ってドヤ顔する人間が爆発的に増えた。オタク向けというタグ付きであるという制約はあるものの、彼らが嫌って背を向けたはずの売上や流行にも進んで乗るようになった。ネットにおいていい意味でも悪い意味でもマスコミの代弁となっている2chのまとめサイトに対して無批判に言いなりになっている者も現れた(鏡に映った自身の姿を見せて、そこにいるテレビに従順なママンと比べてやりたいところだが)。
自分は、オタクのそもそもの成り立ちを見るとこれも自然な流れだなと思っている。
先ほど自分の感性の正しさを証明するのは自分自身だけだと述べた。しかし、賛同者が自分だけである、という事実は、普通の人間の感覚からすると実に孤独でさびしいものだ。自分の他に自分の正しさを証明してくれる人が欲しがるのも自然なことだ。その結果求めたのが、オタクを自称している仲間、さらにはそのオタクの称号を発行してくれるオタクのコミュニティなのだ。自分はこういう人の自然な感情を否定するつもりは毛頭ない。そもそも大塚英志が「人間社会で生きる権利を得るために、オタクたれ!」と無理させて生まれたのが探求心の強いオタクなのだ。逆に言うと、人としての探求心を植え付けられなかったオタクは、ただの醜い消費者に過ぎない。彼が憂慮する以前、『おたくの研究』で散々コケにされていた通りのダメ人間である。

話を元に戻すと、芸人も同じく、笑いのために普通の人とは違う道を行く人種である。芸人とは言っても、実に多種多様である。本来ならば、彼らの価値を証明する確固たるものは、「芸人として生きている」という事実、それだけだ
しかし、本当だったらその業界で生き残れてるだけで価値があることの証明であるはずなのだが、ただ生きているだけで生きている価値を理解するのは実に困難である。何か明確な指標を欲しがるのが人の性だ。それで、我欲の強い者が「一番」を決める祭典を考え出した。「自分を生かしてくれたお笑いというものに恩返しするため」とかいうもっともらしい理由を付けて(本当にそう思っていたのかもしれないが)、芸人しか得をしない祭典を実現したのだ。


ただ、そのような芸人のエゴは、赤の他人である視聴者にとっては実にどうでもいい代物だ。芸人がてめえらのための「一番」を取るために一生懸命になっているお涙頂戴の映像を見せられても、「勝手にやってろ」くらいにしか思わない。それどころか、勝つための、勝者になるための、打算ありの笑いなんか、こちらから願い下げである。
勝者に共感するのは、同等以上の勝者か、勝者(自分以下の存在がいる人間)だと思い込んでいる人間だけであり、真の弱者は決して勝者に共感はしないのだ。それゆえ、弱者を含めて笑わせるには、自分も弱者になり下がるか、「自分をも笑う」ことが必要である。
偉大な笑いとはすなわち、弱者をも笑わせることなのだ。


まぁ、今のマスコミの人間というのは基本的に大学出の中でも世渡りの上手い連中が牛耳っているわけで、相対的に見れば日本社会における勝者しか存在しない。自分のような弱者の目から見たら、普通に考えてクズにしか見えない憎悪の対象である。

というわけで、相対的に弱者がどんどん増えている今の日本社会において、「視聴者のための番組作り」とかいう言葉に潜む自己矛盾や詭弁にすら気づかないほど愚かな勝者によって、公共の電波を通じて画一的に発せられる言葉は、本当の勝者、あるいは自分も勝者の一員だと勘違いしている連中のがらんどうな心に虚しく響くか、自分が弱者であると悟った者たちにまったく響かずそのまま他のもっと共感できる存在の所に逃げられてしまうか、そのように愚かな姿によって同じ勝者にすら愛想を尽かされるか、このいずれかしかないのである。

マスコミ以外に世論を代弁する存在は無いので、このような世論の警鐘をマスコミに対して分かりやすく鳴らしてくれる存在が無いのが、自業自得とはいえ実に不幸である。

theme : THE MANZAI
genre : お笑い

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かうんたぁ
プロフィール

ごてぃ

Author:ごてぃ
茨城から都内の大学院に通う人
専門は中国近現代文学のはず
文章を書かせると人格が変わることに定評があるらしい
「誰だか知らないけど有名人っぽい」と意味不明な事を言われる
黄昏をこよなく愛する男。

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